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きっかけは水力発電。岐阜の小さな集落・石徹白が自治の精神を取り戻すまで || 平野彰秀

2022.09.13|コラム

岐阜県郡上市の山間にある石徹白(いとしろ)。人口250名、冬は大人の背丈を越える雪が降り積もる小さな農山村です。

有名な観光名所があるわけでもなければ、アクセスが良いとも言えません。にもかかわらず話を聞きつけた人が次々と訪れ、石徹白のあり方や暮らす人の姿勢に惹かれていきます。

そのきっかけとなったのは地域と移住者が一丸となって作りあげた水力発電。旗振り役として2011年に移住し、縄文から続く集落を未来に残すべく挑戦を重ねる平野彰秀さんにお話を伺いました。

 

Profile
平野彰秀

平野彰秀

岐阜県岐阜市生まれ。14年間の東京暮らしを経て、2008年岐阜市にUターン。2011年より100世帯250人の集落・岐阜県郡上市白鳥町石徹白在住。自然エネルギーと地域づくりに取り組む。2016年、集落ほぼ全世帯出資で小水力発電所を建設。その模様は、ドキュメンタリー映画「おだやかな革命」に取り上げられた。

 

 

神の気配が宿る集落・石徹白

 

「石徹白」という地名を聞いたことのある人はどのくらいいるでしょう。秋が深まるほんの手前、石川県から車を走らせること2時間。どんどん深くなる山道の先にその場所は静かに存在していました。

 

──石徹白は想像以上に山深いところにあるんですね。

 

「そうなんです。ようこそお越しくださいました。インタビューの前にこの地域にとって一番大切な場所に行きましょうか。白山中居神社という神社です。その方が石徹白の雰囲気をわかっていただけると思います」

 

──ぜひお願いします。もともと平野さんはどちらの出身ですか?

 

「岐阜市出身です。水力発電プロジェクトを始める時に石徹白に出会い、この場所に骨を埋める気持ちで移り住みました」

 

──石徹白は新しい人を受け入れてくれる場所ですか?

 

「意外とオープンな人が多いですよ。集落を一人で歩いていたら声をかけられるかもしれません(笑)かつては白山信仰の拠点として、人の往来が多かったと聞いています。山奥ですが人の行き来があることが当たり前なんです」

 

──じゃあ新しいことへのハードルはあまりないのでしょうか?

 

「むしろ新しいもの好きかもしれません。さあ神社に着きました」

 

 

視界に収まりきらないほどの大杉が何本もそびえ立ち、降りしきる雨粒と荘厳さに思わず声を失うほど。彰秀さんはすっすっと歩を前に進めていきます。

 

「ここ白山を流れる川は北陸・東海地方の暮らしに恵みをもたらす源流です。農耕を司る『水の神様』とも言われていて、石徹白の水力発電でもこの水を活用しています」

 

──静かなのに圧倒的な存在感がありますね。まるで誰かに見守られているような…

 

「石徹白にとって水と神様は密接につながっています。水で発電することは御神体で発電していると言えるかもしれません」

石徹白の神様にご挨拶をしてから、彰秀さんの妻・馨生里さんが営む石徹白洋品店へ。あたたかいお茶をすすりながら、ゆるりとインタビューが始まりました。

 

 

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Credit
Photo&Text_Nao tadachi