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村、森、人。岡山県・西粟倉が活かされ、活かすもの。 || 牧 大介

2021.03.29|ARTICLE

 

──ビジネスの創設と情報発信を同時に進めていく中で、手ごたえというか、流れが変わったと実感したのはいつ頃でしょうか。

「新しく会社ができたり、新しい人が入ってきたりと、じわじわと効果が表れ始めたのですが、2011年あたりからぐっと加速して、移住者が増えていきました。東日本大震災をきっかけに地方への人の動きが活発化してきて、さらに2014年に国が地方創生を掲げて『まち・ひと・しごと創生本部』ができたのですが、早くからスタートを切っていたのでその波にもうまく乗れました」

──今の社会状況の中で、子どもの数が増えている地域は珍しいですよね。

「子どもの数は2011年が底で、幼小中12学年合わせて126人だったのですが、今では150人以上に増えています。人口としては減っていますが、子どもが増えると村が賑やかになりますよね。周辺では入学者ゼロという村もあるので、移住者が入ってくることに関して若干ネガティブだった人たちも、結果的によかったねという雰囲気になっていきました」

 

──立ち上げた当初はまだ地方創生の機運も高まっていない中で、地道な作業だったと思うのですが、どういう心持ちだったんでしょうか。

「2008年の『百年の森林構想』を出した時も、“諦めない宣言”を出しただけなんです。この森と、この村の未来を諦めない、可能性があるという前提に立ってチャレンジしようってことですよね。過疎地高齢化は止めようがない、どんどん人が減っていくしかないという思い込みがあるなかで、『やってみないとわからんぞ、やるだけやってみよう』と、その時々でできることを今も積み上げてきているという感じでしょうか」

──そのような取り組みを続けていく中で、西粟倉村の今後の目標というのは。

「『百年の森林構想』というビジョンがあって、美しい豊かな森があり、その中で人々の暮らしを成り立たせていくという非常に抽象的な向かうべき方向はあるけれども、じゃあ現実的にどういう村にしていくのか、ということについては、『百年の森林構想』以降もいろいろと議論がありました。最近だと2017年に、役場の人たちが中心になって考えた“生きるを楽しむ”というスローガンがあります。『百年の森林構想』自体は、森を大切にして、森から産業を生み出していこうという宣言だったのですが、そこに人々の暮らしとか、村民の幸せをどのように考えていくのか、産業政策に偏らず全村的な形で、村の価値観を示していく言葉も必要なんじゃないかということで“brighten our forests, brighten our life, brighten our future!! 生きるを楽しむ”という言葉が出てきました。間伐をして森を美しく豊かなものにしていく中で、森と共にある自分たちひとりひとりの人生や暮らしをより良いものにしていこう、その結果がこれからの西粟倉の未来なんだというメッセージです」

 


ローカルベンチャーの新しい雇用のカタチ

──ローカルベンチャースクールも行っているそうですが、今後、ローカルベンチャーに関しては、どのような可能性を感じていますか?

「小さな会社は、個人事業主も含めて40数社の事業体ができたのですが、就職できるような雇用を生んでいく会社はまだ少ない状況です。ひとりや家族、数名単位でやっている会社がまだまだ多いので、村出身の子たちがUターンで戻ってこられるような職場をなんとか作っていきたいなと。これは村の人たちの強い願いでもあります」

 

──次の段階に入っていくということでしょうか。

「ここから先は、めちゃくちゃ大きいというわけではなく、売り上げで一億円を超えるくらいの事業を増やしていくことに注力しようと思っています。今までは、何かやってみたいという人がアイデアを持ち込んで事業を作っていったのですが、今後は、ある程度プランニングしてから、それをやってみたい人を募集してみようと。アイデア持ち込み型の起業支援というより、ある程度力を持っている人達が叩き台を作った上で、その実行チームを組成していく形ですね」

──また新しい取り組みですね。

「面白いプロジェクトの企画を、インターンや専門スキルや経験を持つプロボノの方々とブラッシュアップしていき、ひとつのプロジェクトに思い入れを持って作り上げていくことで、周りの人たちも巻き込みやすくなると思っています。種火から、薪をくべていくごとに火が大きくなっていくプロセスをイメージしているので、“TAKIBIプログラム”という名前をつけました」

 

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Credit
Photo_MURAKEN
Text_Aya Fujiwara
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