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ポップに弾ける!楽しみながら実現する地方創生の新しいカタチ || 清宮雄樹 / デイトナ・インターナショナル × 君島登茂樹 / シナノソイル

2022.10.31|コラム

全国でセレクトショップ「フリークス ストア」を営むデイトナ・インターナショナル。サステナブルな意識の高まりや地方創生への想いから、2022年6月に電力の家庭向け新プラン「フリークス電気」をスタートさせました。長野県の太陽光発電所を筆頭に作られた再生可能エネルギーを利用できるだけでなく、同県を拠点に社会活動に取り組むNPO法人シナノソイルへ毎月100円を応援金として届けられるサービスです。


シナノソイルでは応援金を元に、学生ボランティアの手も借りて耕作放棄地でポップコーンを育成。ポップコーンを新たなご当地名物にして、農業従事者の高齢化や後継者不足によって耕作放棄地が増え続ける問題に歯止めをかけようと試みています。発電と消費、都市と地方、若者と高齢者……石油を代替するエネルギーを活用し、経済を循環させていこうという姿勢は、まさにMEGURIWAも提唱する「サーキュラー・バイオエコノミー」そのもの。動き始めた新たな“循環”はどのようにして生まれ、どこへ向かおうとしているのでしょうか。現地へ伺い、プロジェクトを牽引する清宮雄樹さんと君島登茂樹さんに話を伺いました。

 

Profile
清宮雄樹

清宮雄樹

デイトナ・インターナショナル執行役員、ブランディング本部 部長 PR/Branding ディレクター。長野県庁のジビエ振興室との取り組みで制作した「ジビエフリーク」や新電力プラン「フリークス電気」など、地方創生やサステナブルに配慮した取り組みなどを牽引する。

 

 

Profile
君島登茂樹

君島登茂樹

耕作放棄地の有効活用を目指すNPO法人シナノソイルの代表。また、地元食材と発酵文化の発信がコンセプトのレストラン「HAKKO YAMANOUCHI」や小布施のフルーツタルト専門店「KUTEN」など、長野県内に複数の飲食店を経営する合同会社U.I.internationalの代表も務める。

 

 

多くの若者を呼び込んだ耕作放棄地での体験イベント

2022年10月14日。長野市松代地区にあった耕作放棄地を再利用したという小さなトウモロコシ畑で、収穫体験イベントが開催されました。


抜けるような青空のもと、セレクトショップ「フリークス ストア」のスタッフや、NPO法人シナノソイルと一緒に活動してきた学生ボランティアなど、20名ほどが集結。人の背丈よりも大きく育ったトウモロコシの茎から立派に育った実をもぎ、乾燥させるため柵に吊るしていきます。ほとんどの人が初体験ということでしたが、時折笑い声が上がりながら、皆で楽しそうに収穫しているのが印象的でした。

とりわけ積極的に作業をこなしていた学生ボランティアの一人に声を掛けました。長野県立大学3年生の南井賢大さん。ここで収穫されたトウモロコシを真空パックに包み、そのまま電子レンジで温めればポップコーンが作れる「爆裂 シナノポップ」を起案したメンバーの一人ということです。

 

──面白いアイデアですよね。

 

南井「パッケージデザインはフリークス ストアさんにお願いしつつ、ポップコーンのアイデアは僕ら学生たちで考えました。海外にそうした製品があることを見つけ、同じようなことができないか試行錯誤して。採れたままの姿でまるごとお届けできるのが面白くて、ここの畑で無農薬で栽培されたトウモロコシを知ってほしいという想いもあったんです。今日こうして無事に収穫できてよかったです」

──再生可能エネルギーの代金の一部を耕作放棄地の活用に充てるという取り組みについて、どう思います?

南井「僕自身、長野県の阿南町という田舎町の出身で、耕作放棄地は大きな課題です。僕たち若い世代が盛り上げていかなきゃといつも頭の片隅にあるんですけど、解決策は思いつかなくて……今回、こうして地元の課題を改善するひとつの事例ができたことは、すごくうれしいです。特にトウモロコシという新たな農作物を使って地域の資源を活用し、魅力を伝える武器にしようというのは僕の中ですごく革命的でした。それに今日のイベントがそうなんですけど、みんなと一緒に行動するのってものすごく楽しいんですよね。製品のパッケージデザインもすごくポップで、パーティーみたいですし(笑)。こういう場がたくさん増えていったら、もっと面白いことになるんじゃないかと思います」

 

次に声をかけたのは、フリークス ストア長野の店長である市川奏太さん。長野出身で、少し前から店長に就いたといいます。

──市川さんも、この畑でトウモロコシ作りに携わられたんですか?

市川「はい、何度か。草ボーボーのときから(笑)。今回、こうしてトウモロコシが実ったのは本当に嬉しいですし、今後ポップコーンの商品として全国の店舗に置かれると思うと感慨深いですね。ここまで店舗スタッフが商品作りに密に関われるのは、そうありませんから。なにより、学生の子たちが楽しそうにやってくれているのを見ていると、すごくいい取り組みだったなって思います」

 

──お客さんとの新たな接点にもなりそうですよね。

市川「フリークス ストア長野店って、他のどの店舗よりも地域との密着度が高いんじゃないかなと思っています。設立から20年ほどと長いですし、みなさんから愛していただいていて、『服のことを聞くならフリークス ストアだよね』って思ってもらえているんじゃないかなって。今回、こうして地域の問題にも積極的に関われたことは、とてもよかったですね」

 

セレクトショップは人と人とをつなぐ場へ

次々に収穫されていくトウモロコシ。その様子を温かな表情を浮かべながら見守っていたのが、プロジェクトを主導してきた一人であるデイトナ・インターナショナルの清宮雄樹さんです。この日はテレビ局や新聞社のメディアも数多く訪れており、ひっきりなしに取材対応をされていたところ、合間を縫ってお話を伺いました。

──今日、この日を迎えてのご感想はいかがですか?

清宮「やっぱりうれしいです。だってほんとに、いろいろな人から『そんなのできるの?』っていわれましたし、『フリークス電気』の取り組みから考えればけっこうな月日が掛かっていますから。この場所も1年前までは誰も寄り付かなかった耕作放棄地だったのに、今日はこれだけたくさんの人が集まって、みんなでトウモロコシを収穫できて……耕作放棄地は農業衰退を象徴する土地というだけでなく、山から降りてきた有害鳥獣が住み着き、近隣の作物に被害を及ぼしてしまうのも問題なんです」

「そうした獣害は、長野県でも多いときで十数億円に及ぶそうで。実は今回の『シナノポップ』のプロジェクトが始動する前、長野県庁のジビエ振興室と手を組んでジビエカレーの缶詰を作りました。鹿肉を魅力的な商品にすることで、ジビエのことや獣害、不足するハンターについて関心を持ってもらうことが目的で。そうして獣害について調べていたとき、耕作放棄地の問題についても知ったんです」

──なるほど。そういうストーリーがあったんですね。もともと清宮さんであったり、フリークス ストアは環境に対する意識は強かったのですか?

清宮「やっぱり洋服の業界って、環境に対する負荷が大きい業界です。じゃあ『モノを作らないようにしよう』というとファッション自体を否定することになっちゃうので、我々として何ができるのか常々考えていました。リユースやリサイクルを企画するものの、やれることには限りがあって……。できるかぎり炭素排出をなくそうと、新電力会社のみんな電力さんに協力してもらって、渋谷の路面店で使用する電力を再生可能エネルギーに切り替えりもしました」

「実はこれが『フリークス電気』を作るきっかけで。僕らが上手にパッケージし、ブランディングすることで、みんな電力さんが持つサーキュラーエコノミーなソリューションをもっと多くの人に届けられるんじゃないかと思ったんです。耕作放棄地の問題も頭にあったので、契約をいただいた方から少額の応援金も負担してもらい、それでなんらか問題解決に向けた動きができればいいなと」

 

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Credit
Photo_Nao
Text_Hiroyuki Yokoyama