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ポップに弾ける!楽しみながら実現する地方創生の新しいカタチ || 清宮雄樹 / デイトナ・インターナショナル × 君島登茂樹 / シナノソイル

2022.10.31|コラム

 

──シナノソイルは、フリークス ストアとの取り組みのために設立されたんですよね。

君島「そうです。もともとは任意団体だったんですけど、しっかりした組織としてやっていきたいという考えのもとでNPO法人化しました。そのほうが、長野県を巻き込めるからです。やっぱり耕作放棄地のような問題と相対するには自治体との連携が必須ですから。それに今後も継続させていくには着実な収益が必要で、費用対効果の視点でもトウモロコシは優れているんですよ」

 

──ちなみに、初回となる今年は、どれくらい作付けしたんですか?

君島「全部で1500平米くらいですね。そこに2000粒を植えて、1つにつきトウモロコシが4~5本採れる計算ですが、やっぱり虫食いが発生したりするので、実際の収穫数は半数程度になりました。はじめてだったのでうまくいかない部分もあり、来年は収穫率をもっと高められれば。この松代の土地は粘土質で、長いもが名産なんですけど、今回やってみてトウモロコシが無事に育つことがわかりました。なので今後は、より高原の、黒土の場所でもいけるかなという手応えを得ています」

──次もうまくいくといいですね。

君島「ええ。地域貢献といっても、ただそれだけでは価値にならないので、ご当地性を出したフレーバーを加えてみたり、いろいろと挑戦していきたいですね。収穫祭にもっと多くの関係者をご招待して、もっと多くの人と一緒に活動を分かち合えたらいいですよね」

 

まずは触れてみるところから循環は動き出す

収穫体験イベントがあったその日の夕方。君島さんが経営する長野市内のお店で、清宮さんと君島さんの二人はささやかな打ち上げを行っていました。厚かましくもその場に招かれたMEGURIWAの取材陣。より突っ込んだ話を投げかけてみました。

──私たちはサーキュラー・バイオエコノミーという、石油に変わる代替エネルギーの活用や循環型経済へのシフトを提唱しています。こうした仕組みについて、どう思われますか?

君島「前は大量生産・大量消費が当たり前でしたけども、サステナブルな文脈だけでなく、人的リソースや燃料代の高騰といった日本が抱える問題によってこのまま続けていくのは困難になってきたことがわかってきたんだと思います。もう、リズムが合わなくなってきている。そのため今回の『シナノポップ』も、余すところなく活用できるよう循環型の設計を考慮しました。うまく循環を作ることで、地域内である程度のリソースも資金も回っていきます。農家さん同士の横の繋がりも強まりました。『シナノポップ』も、きのこ農家さんやりんご農家さんと初めて面識を得て、堆肥を分けてもらったりしたんです。生産地における地域の循環と商品の売買における循環、この両輪がうまく回っていくと、より魅力的な関係が生み出せるんじゃないかと思っています」

清宮「君島さんのいうとおり、循環型経済というのは多くのコミュニティ、チーム、仲間、共感者のみんなで作り上げていくもので、誰かが独断専行してできることではないんですよ。一人だったら、到底できない。我々のようなアパレル業界には巨大なバリューチェーンも存在しているので、すべてを自己完結するのは実質不可能で、関係するみんなの協力が得られないと課題解決につながりません。それぞれが持っている能力や資産をお借りしなくてはいけないし、ときには自分では気づいていない能力や資産に気づかされることもある。全員が完全に同じ方向を向いていなくたっていいんです。違いがあってこそ、それぞれが力を発揮することで物事を循環させられるのだと思いますから」

──共感や価値観を、どこまで共有できるかが大切ですね。

清宮「はい。我々にとっては、ちゃんとお客様も参加してもらうこと。一方的に製品を提供するだけでなく、興味や関心を払って、応援もしてくれるかどうか。こちらもそれに応えて、一緒になって循環していける。今日の収穫体験は、本当にいいイベントでしたよ。あまりに話が壮大になって、尊い存在になってしまうと、『無理じゃない?』と感じて先送りされてしまいます。スピード感をもって、今できるところから進めればいいのであって、足りない部分があれば、そのソリューションを持っている人をどうにか呼び寄せられるようあとから働きかければいいんです。矛盾もあって当然で、とにかく共感してくれる人と一緒に動き続けていれば、循環して描き出されたサークルもだんだんとキレイな形になっていくと思いますよ」

 

──君島さんは、サーキュラー・バイオエコノミーに関心のある人にどういう所からアクションすればいいと提案されますか?

君島「調べようと思っても正解は見つかりにくいので、あまり小難しく考えないで、まずは触れてみるのが大切ですね。一回、その循環が描きそうなサイクルを。僕たちの活動を知ってもらって、『あ、これがサーキュラー・バイオエコノミーなんだ』ってちょっとでも知ってもらえればOK。情報を得た後に、今日のようなイベントに参加してみるような体感が来ると思いますから。それに、我慢してまでやるべきではないと思うんです。ほんとに心の底から楽しいとか、買いたいとか思ったことを、無理せずにやってほしいですね。自分の幸せに少しでもプラスにならないと、『環境にいいから』と肩肘張ったところで続きません。僕らも、楽しいからこのプロジェクトを実施しています。耕作放棄地をこれだけ有効活用して、ポップコーンの将来性に期待もできるのですから」

──NPO法人の設立など、苦労されたこともあったんじゃないですか?

君島「それは、そうですね(笑)」

清宮「最初は誰かがリスクを取らないといけないのも事実。でも、その分僕らは全力で応援したいし、しっかり先行者利益を上げてほしいとも思っています。そうしたほうが、『そんなに儲かるなら、自分も!』って思うからね」

君島「僕自身は、儲けようとは思っていないんですけどね。じゃあ、御殿を建てましょう(笑)」

清宮「これが『シナノポップ』で建った御殿かー!ってね(笑)」

 

──楽しみにしてます(笑)。

夜も深まり、その日は解散。日が明けたら、また来年の話が始まります。信濃の地で弾けるようにして生まれた『シナノポップ』の環は、パチパチと爆ぜるように、大きく膨らんでいきます。

 

 

Profile
横山博之

横山博之

2000年に日本大学芸術学部文芸学科を卒業後、フリーランスのライターとして活動を開始。カバン、時計、ファッションと男のライフスタイルを彩るモノに詳しく、デザイナーや職人などモノづくりに関わるキーパーソンへのインタビューも豊富にこなす。時代を塗り替えるイノベーティブなテクノロジーやカルチャーにも目を向けている。

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Credit
Photo_Nao
Text_Hiroyuki Yokoyama