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「農作業着・たつけを蘇らせた石徹白洋品店が考える、地域に根ざしたのものづくり」||平野馨生里 /石徹白洋品店店主

2020.12.08|ARTICLE

 

原点に戻り、自然の恩恵に感謝しながら作る

石徹白洋品店の服づくりは私たちがイメージするものと異なるかもしれません。まずは染めから。春から秋にかけて草木染と藍染を行い、染め終えた布からそれぞれの服のデザインと型紙を発想していきます。その後、近くの縫い子さんが一枚一枚仕立てあげ、想いの込められた一着が完成。

 

それはいつしか見失ってしまったものづくりのプロセスを自分たちの手に取り戻していく試み。工程に目を向け、石徹白らしいものづくりに昇華しているのが特徴です。

*写真 上2枚 石徹白洋品店より提供


──染めから取り組むのはなぜでしょうか?

 

「石徹白に藍を育てる文化があったので挑戦したかったのと、草木染はカンボジアの影響が大きいです。四季折々の植物から生み出される色が美しいことを実感していたので。自生する植物で染めることで石徹白らしい色を追求したいと思っています。桜、よもぎ、マリーゴールド…どれもやさしく美しい色合いになるんですよ」


──石徹白でしかできないことを大事にしているんですね。

 

「外から買ってくれば何でもできるし、どんな色だって出せるけれど、それじゃ面白くないですから(笑)私たちは石徹白にある自然や季節と向き合って作ることを大切にしています」

──まずは向き合う。

 

「たとえば染めた布が『フリルシャツが合うよ』『夏の日差しの下でノースリーブとして着たら最高』って語りかけてくることもあるんですよ(笑)流行ではなく、布がなりたい形に合わせます」

 

──最近は羊やヤギの飼育、養蚕にも取り組んでいますね。

 

「それは商品をたくさん作るためではなく、服に携わる者としてどのように糸ができるかを学ぶためです」

──なぜプロセスを学ぶ必要があると思いますか?

 

「やっぱり背景を知ることが大事だと思うから。ウールやカシミア、シルクって本来とても貴重なもの。でもお店に並んでいるものを見ていたら気付けないですよね。背景を知ればものに対する眼差しが変わるし、意識自体も変化するように思います」

馨生里さんに「ものづくりで心がけていることは?」と伺うと「誰かが我慢する服は作らないこと」という言葉が返ってきました。たとえば染める人の体に悪影響を及ぼす化学染料は使わない、作っていて楽しいものを商品にする、適切な工賃でお願いする。心地よい環境下で生みだされるものはアウトプットにその気配が宿ります。

「このウールの靴下は予算の関係で頓挫しかけましたが、デザイナーがすごく楽しそうに作っていたので商品化に踏み切りました。するとデザイナーの頑張りを見守っていた社内の子が色違いで2枚買いする現象が起き、お客さまにもとても評判が良くて。いい気持ちで働くと自然と結果もついてくるように思います」

 

──適切な工賃でお願いするというスタンスも深いです。

 

「だから皆さんが考える『服はこのくらいの価格だろう』という現状の市場価格を元にした想定をどうしても上回っちゃうんですけどね。昔はたつけを1年に1本だけ作り、古くなったら布を重ねて着ていたそうです。となると服ってそもそも高いものなのかもしれません」

 

──思想も届けていくんですね。

 

「私たちは値段の背景をきちんと伝えて、既存の価値観を変えていければと思っています」

 

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Credit
Photo&Text_Nao tadachi
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