LATEST

自然と自分の感性に出会う場所「takase」

2022.09.04|コラム

東京都内から1時間弱。首都高をおりて少し進むと、目に飛び込んでくる青い空の広がりに驚く。

 

都心から20~30km圏内に位置し、首都近郊における貴重な大規模緑地空間「見沼たんぼ」で知られる見沼地区に、約2年前「takase」は、ひっそりとオープンした。

 

マイペースで更新される、古道具や器の美しい写真。SNS越しに伝わってくる独特の美意識や、コトバが気になりすぎて、気がつけば、取材に足を運んでしまっていた。

 

 

端正な住宅街をぬけ、駐車場に車を止めて胸を高鳴らせながら扉をあけると、オーナーの高瀬さんが笑顔で迎えてくれた。

 

「ここ”気”がいいでしょ?」

 

入り口から感じていた心地よい感覚を、見透かすように声をかけてくれる。

 

かつては海であった場所も多く、縄文時代の土器が発見されているという見沼の歴史を伺いながら、ガラス扉越しに目を向けると、庭先の空に氷川女體神社(ひかわにょたいじんじゃ)の鎮守の森が見える。

 

 

黒い家屋の扉の奥に、これほど自然とのくらしを感じられる空間があることに感心しながら、お店の中の隅々まで行き届いた美意識を楽しむ。お店を作るときには、90C下にある縄文時代の土を掘り上げ、その一部を床に使っているのだとか。

 

 

6000年前からの地続きの感触がここには、ある。

 

店内は、有名無名を問わず、もともと収集家であったオーナー高瀬さんの好みで集められた器や服が、芸術作品のように並べられている。見た目の美しさや背景にある物語もさることながら、そのどれもが「あるべき姿であるべき場所にある」調和の中で、不思議と存在感を放つものばかり。

 

 

「かわったことをやると、かわった人があつまってくる。出会うんです。」

 

この日は、翌日から開催されるニットデザイナーさんの個展準備。こちらも、思わず素晴らしい手編みのニットに出会ってしまって、勝手にテンションがあがる。

 

「今は、郊外からのお客さんがおおいけど、このお店を通して、この街に暮らす人々の美意識も引き上げることができたらよいなと思います。」

 

自然を感じながら、モノ選びをするというのは、都内では得られない体験だ。自分の感性が引き上げられる実感の中で、買い物を楽しむ。そんな場所は、なかなかそう巡り合えるものではない。

 

 

2月16日から営業がはじまる喫茶は、全ての窓が目線の高さにあり、窓越しには、庭に新しく植えられたプーゲンスと赤蝦夷松と、昔からそこにあったという木蓮の木が見える。そして、その先には見沼のそらが広がっていた。

 

 

お店づくりのきっかけにもなったという、オーナー高瀬さんの尾瀬ヶ原の一人旅で強烈に感じた、自身の感情に出会う体験。普段、複数で登ることが多かった登山を、ひとり自然の中を歩くことで、普段は気づいていなかった心の奥底にある感情が溢れ出てきたのだそう。

 

都心でくらす人が、ここにきて、それに近い「何か」を感じる機会にもなればと、隅々まで高瀬さんの想いが込められた空間になっている。

 

ご自身の目利きと直感に重なる人やモノとの繋がりが、店内の景色をゆっく移り変えていく。自分から始まる物語を、ゆったりとした日々の中で楽しむ。尾瀬ヶ原の木道を歩くように。

 

 

庭に植えた植物が育ち、もとある木蓮の木と調和されていく。

古くからあるものや、つながりの中で地続きの新しい景色が、日々生まれる。

 

ここを訪れるということは、その景色の一部になることだ。自分を生きるとは、そうゆうことなのだろう。ここは、都会と自然のあいだ。自分の感性に出会える場所「takase」。

 

是非、その扉を開けてみてほしい。

 

takase

〒336-0916 埼玉県さいたま市緑区宮本2-19-14

※駐車スペース7台有り

URL: http://takase-0.com/

Instagram : https://www.instagram.com/takasenotakase/

Credit
Photo_Chikage yoshida
Text_Ryo Yoshihashi